ワイルドライフアート4

Wild life art

私の所属する動物アートの団体「日本ワイルドライフアート協会」の展示会が年3回あり、それぞれに新作を出し続けていることもあり、現在制作活動の大きな比率を占めています。今後もこのペースで作品が増えていくことと思われます。ただ私の場合モチーフのチョイスがややマニアックと言われますが、これは自分が実物を見てみたいと思うものを作るというのが動機になっているからです。

 

31.親近感

Sense of intimacy

2013年発表 体長35cm ピーチケント使用
南米に住むウアカリは「人面猿」とも呼ばれ、顔に関していえば人間に最も近い猿と言われています。タイトルの「親近感」とはそういうことですが、私の風貌を知っている人なら、さらに突っ込んだ意味を知るでしょう。これも日本の動物園ではお目にかかれず、一度実物を見てみたい動物です。その独特の顔を形成する微妙な凹凸を表現するために、顔の部分だけでも十数枚のパーツに分割して緻密に組み立てました。それに比べると体の方は明らかに毛足の長さに手こずっています。
 

32.オオサイチョウ

Great Hornbill

2013年発表 本体全長50cm ピーチケント、マーメイド、色段ボール使用
頭に分厚い冠を付けたような鳥で、東南アジアに住んでいます。この冠はクチバシのような質感ですが中空で、重いものではありません。この鳥が飛ぶ時蒸気機関車のような音がするそうで、共鳴器のような役目を果たしているのかも知れません。色のついた部分はプリント紙、黒い部分はマーメイドで制作しました。展示スタンドはボール紙の筒ですが、中に1/3だけ水を入れたペットボトルを仕込んで重りにしています。水は満杯に入れると重心が高くなって逆に倒れやすくなってしまうからです。

33.海の賢者

The Sage of sea

2014年発表 全長50cm 光沢インクジェット紙使用
タコは無脊椎動物の中で最も知能が高い動物です。西洋では悪魔の魚として恐れられていますが、日本では食用はもちろん鉢巻きを巻いたりユーモラスなキャラクターとして人気があります。そんなタコ(マダコ)を実物大で制作しましたが、ネックとなったのは継ぎ目のない軟体動物の曲面のみのフォルムと、粘液で覆われたぬめぬめした質感でした。フォルムについては、とにかく脚をたくさんのパーツに分割し、なるべく全ての脚を伸ばしたポーズで表現することでしのぎ、質感については光沢のあるインクジェット紙にプリントすることでペーパークラフトに特有の「乾燥感」から遠ざけました。

34.試練

Ordeal

2014年発表 ステージサイズ70cm四方 ピーチケント使用
実際にアフリカに行った知人から、ヌーの移動中の写真を提供してもらい、それをもとに有名な川渡りのシーンをジオラマで再現しました。写真で見ると動画ではわからないそれぞれのヌーの個体差、飛び込む姿勢、濡れた後の体色の変化とタテガミの変形などがよくわかり、忠実にミニチュアサイズで表現しました。対岸に集まり躊躇している集団、ある者は飛び込み、ある者は歩いて入水、体を沈めての泳ぎ、手前の岸に上陸して振り返るまでを、徐々にサイズを大きくして遠近感を強調して作りました。川の中では船舶模型のように喫水線でカットして水面を暗示し、とにかく背景を使わず無言劇のようにヌーの川渡りという舞台を表現しました。いわば枯山水です。横から狙っているワニの頭がアクセントになっています。

35.ご対面

Face to Face

2014年発表 長さ30cm マーメイド等使用
自分の名前と同じ果物と初めて対面したキーウィが、ご本家の上から目線で見下ろしています。
今回は、均質で無数の羽毛が重なっている体を立体化するために、これまでの外殻で囲む中空のペーパークラフトという概念を捨て、立体を26枚に縦にスライスしたMRI画像のような断面図を、間にスチレンボードをはさんで浮かせて重ねていき、山の地図模型かデコパージュのように立体を盛り上げていきました。いわば3Dプリンターのように立体を再現したわけです。鼻先のキウイフルーツももちろん紙製で、断面写真を光沢紙にプリントした後、表面に細かく凹凸をつけて果物の質感を出しています。周囲には、茶色の紙を微細にカットした毛が貼り付けてあります。

36.モリアオガエル

Forest Green Tree Frog

2015年発表 縦30cm横30cm 光沢インクジェット紙・セロファン・紙ヒモ・タント紙等使用
30cm四方のコルクボードに、ほぼ半立体のジオラマとして貼り付けてあります。モリアオガエルの
抱接は1体のメスに対し複数のオスが加わることが多く、水面に突き出た樹上で行われ、乾燥を防ぐために分泌液を泡立てて白い泡の塊を作り、その中に産卵します。このとき、オスたちも全員後脚でかき回して泡を広げるのに協力するそうです。この泡は、パッキングに使われるセロハンの細切りを凝縮して作りました。カエルは光沢紙に印刷しての組み立て。木の枝と葉の軸は紙ヒモを使っています。
 
 

37.老王

The old king

2015年発表 縦30cm横35cm ラシャ。タント紙使用
よく手入れされた水族館のセイウチとは異なり、野生のセイウチには表面がひび割れて独特のテクスチャーを持つものがいます。それが年老いたボスセイウチの戦歴の傷跡にも思えて、いつか作ってみたいと思っていました。それを柄としてプリントしても迫力は伝わらないので、単色のカラーペーパーによる、現場合わせでの凹凸の追加によってテクスチャを表現しました。高村光雲の彫刻「老猿」を意識した作品となっています。

 

38熱視線
Stare

2015年発表 縦23cm横23cm奥行8cm プリント用紙、タント紙使用
別アングルから撮った2枚を紹介しています。このように、視点を変えてもフクロウが自分の方を向いているように見えるトリックアートです。これは、立体を凹面に作ることで現れる錯視現象ですが、ペーパークラフトの場合、山折りと谷折りを逆にして組み立てるだけで出来ます。カラフトフクロウの存在感のある顔面が気に入ってモデルに選びました。

 
 

39北の番犬
The watchdog of north sea

2016年発表 縦40cm横35cm高さ20cm プリント用紙使用。
北海の底で岩場の陰に潜み、睨みを利かせているオオカミウオは、まるで犬小屋で不審者を待ち構える猛々しい番犬のようです。今回は周囲の岩も含め、全部プリントした紙で作りました。顔の傷がハードな歴戦を物語っていますが、展開図ではパーツの隣同士でズレが生じないか調整するのが大変でした。
 
 

40チンアナゴ
Spotted garden eel

2016年発表 縦20cm横20cm高さ16cm プリント紙・壁紙・スチレンボード使用。
細長い魚・チンアナゴは、海底の砂地に穴を掘って潜り、体の1/3ほどを水中に出してプランクトンを食べますが、危険を察知すると一瞬で巣穴の中に引っ込んで消えます。この作品では、そのチンアナゴの動きを再現するために、初めてモーターの動力を組み込み、超低速ギアで回転するカムによって2匹のチンアナゴがトリッキーな動きで出入りするモーション・ディスプレーとして製作しました。左に映っているように、動力源は単三電池1本です。
 
 

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