ペーパークラフト講座

基本篇

このコーナーでは、これからペーパークラフトにチャレンジしようという方のために、基本的な知識やテクニックをご紹介します。中には門外不出の裏ワザに相当する部分もありますが、ペーパークラフトの普及のためには情報の提供を惜しみません。ハサミの使い方に始まり、今後どんどん記事が追加されていくので、全部集めればペーパークラフトの入門書が完成することになります。
第4回〜7回
組み立て
第8回 接続
第9回 紙
実践篇
道具紹介






第1回 ハサミの使い方

 最初から「ペーパークラフトとは」なんて理論から始めても面白くないでしょう。一刻も早くハサミを動かして実践に入りたいという人が多いと思います。そんなわけで、一番先に取り上げるのがハサミの使い方。関連してハサミの選び方にもふれていきます。

 子供相手に工作教室を開くたびに感じるのですが、多くの子供さんがハサミをめいっぱい開いて刃の奥(つけね)の部分で切ろうとしているのです。普段よほど切れ味の悪いハサミを使っているのでしょうか。ハサミの奥で切るのは、力まかせにぶった切る金切りバサミや植木バサミの切り方であって、デリケートな作業を要するペーパークラフトには向いていません。試しに、めいっぱいハサミを開いた形に持ったまま1分間じっとしていてください。すぐに手がつったようにしびれてくるでしょう。次にハサミの先端を1cm程度開いただけの形で持ってください。この形でなら何分でも楽に持っていられるでしょう。切り抜きというのは、あなたが思っている以上に時間がかかるものなのです。楽に作業を続けるためにも、この基本姿勢をしっかり身につけておいてください。

 ハサミの先端で切ることにはさらに多くのメリットがあります。まず切っているポイントがよく見えるから、切り取り線のとおりに切りぬくことができること。ハサミの奥では刃の幅が太いので小回りもきかず、切り取り線になかなか合わせられません。さらに開いた刃先が上を向いているので、見にくいからといって目を近づけるのは危険です。その点、ハサミを開かなければ刃先はいつも前を向いているので安全です。
 もっとも、長い直線や緩やかなカーブなど、短時間でサッと切れるような部分ならば刃の奥から始めて長いストロークで一気に切るというのも時間短縮のためのテクニックですから、その時々の状況に応じて使い分けてください。

 ハサミの先端で切るためにも、ハサミは切れ味がよく、先端のとがった本格的なものをおすすめします。また、指を入れる穴の大きい方には少なくとも3本の指が入らなければハサミが安定しません。大きさは20cm弱、支点がほぼ中央についているものが良いでしょう。

 次に、実際にカッティングをしてみましょう。広告の商品写真や雑誌グラビアの人物や動物の外形を切りぬいてみてください。意味のない形を切るよりも、自分で切りたいものを切った方がやる気も持続するし上達も早いものです。細かい部分の切り方については次回に改めて講座を開きますが、一つだけヒントを。りんかくを一筆書きのように切らずに何回かに分けて切るということです。

第2回 切り抜きのテクニック

 今回は、具体的な形を早く、正確に切り抜くためのテクニックをお伝えします。というのも、やはり工作教室でよく見ることなのですが、多くの人が物の外形線を一筆描きのように切り抜こうと苦労して時間を無駄にしているように見うけられるからです。

 確かに、一筆描きで切り抜く芸が寄席にはありますが、あれは紙質もハサミも違うし、何より本人の技量が格段に違います。そのまねをするのは土台無理な話。専門家のはしくれである私だってすべての形が一筆描きで切れるわけではありません。それよりも、展開図をできるだけ正確できれいに切り抜くことの方が、ペーパークラフトには重要なのです。そのために、今回は次の3つの原則を覚えておいてください。

原則1:紙の切り抜きは彫刻と同じ
原則2:岬はオーバーラン
原則3:湾は左右から攻め入る

 ちなみに、ここでは切り抜く形を「地図」にたとえて説明します。出っ張った角は「岬」、引っ込んだ部分は「湾」、内側のくりぬき部分は「湖」といったような表現になります。(湖はカッターで切り抜くべきなので、今回は触れません。)

原則1:紙の切り抜きは彫刻と同じ

 彫刻は、石にしろ木にしろ、まず素材をおおまかな形に削ってから細部にとりかかります。紙の場合、最初に展開図が見えているものだから、いきなり展開図にそって切ってしまいたくなりますが、それを押さえて、まずは展開図の外側5mmから1cmあたりのところを一周切り抜いてみましょう。これには、紙を軽く小さくして、後の作業をやりやすくする効果もあります。(言うまでもないことですが、右にハサミを持った人は反時計回り、左に持った人は時計回りに一周するのが基本です。)
 ハサミを一周させる間に、展開図のどこから切り始めたら効率的か、というポイントをさぐっていきます。そして落下する流星のように斜めに展開図に近づいていき、外形線に達します。一周する前に外形線に達してもいいのですが、外側のいらない部分は随時切り落としていって下さい。一筆描きで切り抜く人の失敗する点は、いつまでも重くてかさばる外側部分をぶら下げているために紙も持ちづらくハサミの小回りがきかなくなる点にあるからです。

 また、切り残しは後で修正がきくけれども切りすぎは禁物という点でも紙の切り抜きは彫刻に似ています。

原則2:岬はオーバーラン

 たとえば正方形を切り抜くとしましょう。こんな簡単な図形でも、一筆描きでない方が上手に切れるのです。この正方形を野球のダイヤモンドに見立ててください。ハサミで切っているポイントをランナーとします。まず最初の一辺を切り進んだ後、最初の角でストップせずに、そのままの勢いで背景まで切り進んでしまいます。あたかもバッターランナーが一塁を走り抜けるように。
 そして、ランナーが一塁に戻るようにハサミを最初の角に合わせて次の辺を切り抜きます。野球の場合二塁以降はオーバーランができませんが、切り抜きの場合はつねに角は一塁のように走り抜けできます。(外側に十分なスペースがある場合に限られますが)
 じつは、ハサミでは急角度のターンが困難なのです。尖ったハサミの先端を使えば出来なくはありませんが、スピードがにぶるし、角の部分で外形がふくらんだり角度が鈍角になるなど正確さにも欠けます。また、紙がゆがんだり破れたり、表面の印刷がこすれて落ちたりする場合もあります。
ハサミの走り抜けは、それまでぶらさげていた邪魔な外側部分を切り落とす良いチャンスでもありますから、面倒だとは思わないでください。

原則3:湾は左右から攻め入る

 ハサミの切り抜きで一番やっかいなのが「湾」の部分。どうしても無理な場合はカッターを使うしかありませんが、可能な限りハサミでトライしてみましょう。ここでも、切り抜きが彫刻と同じということを思い出してください。彫刻でくぼんだ部分を彫るときは、まわりじゅうからノミを打ち込んでえぐっていきます。切り抜きも、一方向からだけではなく反対側からも切ることによっていくつかの難しい箇所は切り抜くことができます。
 たとえば東京湾の形(ごくおおざっぱな形ですが)を切り抜く場合、三浦半島側から横浜、川崎をへて浦安あたりまで切り進んだところでストップ。次に房総半島からハサミを入れ、市原、千葉、船橋と切り進んで浦安で合流、一気に東京湾がパカッと切り落とされるわけです。切る方向を変えるからといって持ち手を替えることはありません。たいていの場合紙を持った手を手首でちょっとひねって切りやすい角度にするだけでいいのです。
 この、切る方向を変えるというのは、「岬」を切る場合にも応用できます。たとえば犬吠埼を切る時、千葉県の九十九里浜側から切り進めて太平洋上にオーバーランした後、今度は茨城県の鹿島灘から南下して合流するという方法もあります。特に岬が鋭かったり触角のように細長い場合には有効です。

 以上、今回はハサミによる切り抜きのコツを3点紹介しました。あとはみなさんがこれからいろいろな切り抜きを実践していくにしたがって経験の中からさらにいろいろなテクニックを身につけていかれることでしょう。


第3回 カッターの使い方

 ここまで、ハサミについてお話してきましたが、もう一つの切り抜き道具・カッターについても触れておかなくてはなりません。
あまり幼いお子様には無理ですが、カッターなど刃物の正しい使い方は大人の方の指導のもと、なるべく早い時期から教えてあげるのが望ましいと思います。カッターは創造の道具であって、けっして武器などではないという大原則を「刷り込ませるのには、早いに越したことはありません。

 カッターを使うには、カッターマット(下敷き)を使う、手前に引く、刃の進行方向に手を出さないなど常識的なルールがあり、また、それぞれのカッターの説明書にも注意事項が出ていますので、よく守ってください。
さて、カッターにもいろいろな種類がありますが、ペーパークラフトの切り抜きのような細かい作業をするのには、刃先の角度が30°くらいの尖ったものが適しています。(普通のカッターでは60°)

 また、ポキポキ刃を折るタイプのものよりは、一枚ずつ刃を差し替えて使う彫刻刀タイプの方が優れています。このタイプは、軸を鉛筆のように持って使うことができるので、より細かい作業ができるからです。

 次に、実際に切ってみましょう。ペーパークラフト用の紙は普通のペラペラ紙とは違って厚く硬いですから、少し力がいります。刃先を切り始めのポイントに立てて、人差し指で軸の先を押さえ、プスッとカッターマットまで突き立てます。そしてその力を維持したまま切りぬき線に沿って引いていくのです。軽い力で何度もなぞって切ると切り口がきれいにならないので、なるべく一回のトライで切りぬいてください。このような切り方をするとカッターマットも傷だらけになるので、もったいないと思われる方は厚紙や古い雑誌を下敷きとしてお使いください。

 カッターとハサミでは切り抜き作業の手順が全く違います。ハサミではおおまかな形から徐々に細部に切り進んでいたのに対し、カッターの場合はいきなり細部から始めることができます。むしろ、外形を切りぬいて紙を小さくする前に内部の「湖」や「湾」の奥など(例によって外形を地図にたとえています)込み入った部分をあらかじめ切っておく方がよいでしょう。紙が小さくなると押さえにくくなるからです。

 カッターで細かい凹凸や小さな円を切り抜くときは、刃先を立てて、刃の先端だけでザクザクと点線を刻むように切っていきます。小さな円に関しては、半径が合えば彫刻刀の「丸刀」で押し切ったり、レザークラフト用のハトメ抜き(パンチ)で一気に抜いてしまうという方法もあります。

 また、カッターには、定規をそえて直線がカットできるという、ハサミにない特性があります。この場合の定規としては金尺や補強された専用の定規などがありますが、重くて使いづらい欠点もあるので、むしろ軽くて安い定規を使い捨て感覚で使用する方がよいでしょう。

 カッターだけですべての切り抜きを行うことはできますが、私の場合、まず「湖」や奥まった部分、長い直線などのやむをえない箇所だけにカッターを使い、残りはハサミで一気に切り抜いてしまいます。カッターを長時間使うと指が疲れるし、切り抜き線の大部分を占める曲線や短い直線の切り抜きにはハサミの方が適しているからです。このようにカッターとハサミを使い分けることによって、より早く切り抜き作業を進めるのもテクニックの一つです。


 それでは、次の講座までごきげんよう。この講座についてのご質問や、今後取り上げてもらいたいテーマについては、下記のメールにてお寄せください。

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