ファインアートへの挑戦

Challenge to Fine artk

美術展に展示されていても違和感のないクオリティを目標に制作しました。
大型になるので、製作・保管のスペースがどんどんなくなり、なかなか作品は増えません。

 

 1.ソドムの滅亡を目撃するロトの妻


The wife of Lot who witnesses the downfall of Sodom

2002年発表 身長180cm タント紙使用
ロトの妻とは、堕落した町・ソドムを神が滅ぼすとき、善良なロトの一族だけが事前の脱出を許されたものの「後ろを振り返るな」との掟を破り振り向いてソドム滅亡の地獄絵図を見てしまったために罰を受けてそのまま塩の柱に変えられてしまったという逸話の人物です。
このモチーフを視覚化するにあたってイメージの参考になったのは、アポロンに追われて月桂樹に変身するダフネの像、それから苦悶の表情で蛇に巻かれるラオコーンの姿でした。恐怖に凍りついたまま足元から塩の結晶に変貌していくドラマチックな瞬間を、思い切って後ろに仰け反らせたポーズで表現しました。
技術的には、紙で流れるような布の質感を表現するのに苦労しましたが、これだけ大きくなると完成した時の充実感も大きく、楽しい製作でした。
 

2.プロメテウスの受難

Prometeus

2004年発表 高さ62cm タント紙使用
今回は青銅か粘土を思わせる暗緑色一色で作りました。そのためか、初めてこれを見た人は、実際の粘土像に紙を張ったのかと思われたようで、持ち上げてみればこれが軽いということが理解できなかったようです。もっとも、その誤解こそ、作った側としては「してやったり」というところですが。
今回、初めて男の像を作りました。モチーフは、人間に「火」を教えたために神の怒りを買い、岩山につながれ、鷲に心臓を突かれるという罰を受けるギリシャ神話の巨人プロメテウスです。
ただ、ギリシャ神話の男性像が概して女性的になめらかな肌質をしているのに対し、この作品では劇画的なまでに筋骨隆々とした体型に変えました。「金剛力士像」のイメージも入っているため、解剖学的に全く正しい筋肉の表現とは言えない部分もあるかとは思いますが。
段ボールの芯に半加工したパーツをアドリブで張っていくという手法で作り、鷲の羽根のような左右対称な部分を除いてはデッサンも展開図も全く書かず、すべて頭の中の完成イメージを頼りに勘のみで作りました。

3.ペルセウス

Perceus

2005年発表 高さ45cm タント紙使用
ギリシャ神話の英雄ペルセウスの武勇伝の最も有名なエピソード、メドゥサ退治の決定的瞬間をストップモーションで再現しました。直接その姿を見ると石に変わってしまうため、盾の裏を鏡にしてメドゥサの首を切ります。このアングルではメドゥサの右手に隠れていますが、ペルセウスの剣はメドゥサの喉元に突きつけられています。実際の神話では、ペルセウスは眠っているメドゥサの首を切ることになっていますが、それでは迫力不足なので、起きているメドゥサが襲い掛かる「九死に一生」の設定にしました。

4ピエタ

Pieta

2008年発表 左右50cm タント紙使用
ピエタとは、十字架から降ろされたキリストの遺体を抱きかかえて嘆き悲しむ聖母マリアの像で、キリスト教芸術の代表的なモチーフです。ミケランジェロの彫刻が特に有名です。私はキリストを相当の長身、マリアを小柄な女性と想定し、従来の彫刻にあるような「お姫様だっこ」は体格的に無理との判断のもと、このような、上半身だけを抱き起こすというデザインにしました。キリストの高貴さ、男女の皮膚感の差、布の自然な流れなど、紙での表現の可能性に挑戦しました。

5.サムソン

Samson

2007年制作 前30cm タント紙使用
旧約聖書の中の英雄で長い髪に宿る超人的な体力が自慢です。そんなサムソンがライオンを素手で倒す名場面を作りました。ライオンは「ねぶた」の骨組みのように細長い厚紙で大まかな枠を作り、そこに外皮やパーツを付け加えていく手法で作っています。サムソンはライオンと別に途中まで作っておき、関節部を固めずブラブラした状態でライオンに組み合わせ、ポーズを決めてから関節や接触部分を固定していきます。
 

6.ヘラクレスとアンタイオス

Herakles and Antaios

2009年発表 高さ47cm タント紙使用
ギリシャ神話の英雄ヘラクレスのエピソードより。ある日ヘラクレスはアンタイオスという敵と戦うことになり、相手が大地の神の息子で、地に足を付けている限り不死身であることを知りると、アンタイオスを高々と抱え上げ、地面に降ろすことなく絞め殺してしまったということです。この作品は土台を使わず、ヘラクレスの足の裏2箇所だけを接地して自立できるように、中におもりを入れ重力配分を工夫しました。
 
 

 

7.清姫

Kiyohime

2010年発表 高さ30cm タント紙使用
文楽や戯曲で有名な道成寺縁起のクライマックスです。旅の修行僧・安珍に一目惚れするが相手にされず、ひたすらストーカーのように執念深く追い回すうちに狂気のため蛇に変身、道成寺の鐘楼に隠れた安珍を口から吐く炎で焼き殺してしまう女の情念を描いた壮絶な物語です。このアングルでは髪に隠れてわかりにくいですが、襟からろくろ首のような蛇の首がCの字形に曲がっています。子供の多い展示場でこれを飾ったら怖くて泣かれたといういわくつきの問題作です。

 
   
   
 

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